WeaveDestiny百科

第50卦 火風鼎(かふうてい)

火風鼎は、『易経』六十四卦の第五十卦で、上卦が離(火)、下卦が巽(風)であり、雑卦に属します。鼎(かなえ)の器や鼎立、鼎新(ていしん・新しいものを打ち立てること)、そして物を煮炊きして完成させることを象徴し、「木の上に火あり」、木が火を支えて煮炊きし、新たなものを生み出す象です。核心の要義は、 「木の上に火あり、鼎。君子以って位を正しくして命を凝らす」 であり、鼎新して事業を起こすこと、位序(いじょ・身分の順序)を正すこと、使命を集約すること、賢人を養い民を救うことを主とします。上吉の卦であり、旧弊を革め(あらため)た後に新しいものを打ち立て(ていしん)、正位に立ち事業を起こし、物を成し人を養う法則を明らかにしています。

卦象と卦辞

卦象

火風鼎
第50卦 · 上離下巽 · 木の上に火あり
上卦:離 ☲下卦:巽 ☴五行:火・木(離は火に属し、巽は木に属する)
火風鼎の示す道を象徴します。

卦辞

鼎:元吉なり、亨(とお)る。

解釈: 鼎卦は、鼎器(ていき)が安定して立つことを象徴し、大吉で、物事が順調に通じます。旧弊を革めた後に新しいものを打ち立て、国を定め事業を起こし、万事が順調に運ぶことを寓意します。

爻辞

  • 初六: 鼎の趾(あし)を顛覆(てんぷく)す、否(ひ・穢れたもの)を出すに利(よろ)し。妾を得て、その子を以てす、咎(とがめ)無し。

鼎顛趾、利出否。得妾以其子、無咎。 解釈: 鼎の足がひっくり返り、穢れ物を出すのに良い。側室を娶りその子をもらうようなもので、咎は無い。新たに始める初期には、旧弊を除き去ることであり、少し変則的ではあってもその用に合っている。

  • 九二: 鼎に実あり、我が仇(あだ)に疾(やまい)有り、我れ能く即(つ)くことあたわず、吉。

鼎有实、我仇有疾、不我能即、吉。 解釈: 鼎の中に食物が満ちている。ライバルには障害(病気や妬み)があり、私の近くに寄ることができないので吉祥である。剛健であり中正な位置にあって充実し、才能と徳を兼ね備えているため、小人が害を加えられない。

  • 九三: 鼎の耳が革(あらた)まる、その行(はこ)び塞がる、雉膏(きじのあぶら)を食(くら)わず。雨を方(まさ)にすれば悔いを損(そこな)い、終(つい)に吉。

鼎耳革、其行塞、雉膏不食。方雨亏悔、终吉。 解釈: 鼎の持ち手(耳)が変形し、持ち運びが妨げられ、美味しい雉の膏(あぶら)を食べられない。陰陽が調和して雨が降れば、悔恨が消え去り、最終的に吉祥を得る。剛爻で中庸を過ぎた位置にあり、少し小さい障害があるが、時に備えて順調になっていく。

  • 九四: 鼎の足折る、公の餗(そく・ご馳走)を覆(くつがえ)す、その形渥(あつ)し、凶。

鼎折足、覆公餗、其形渥、凶。 解釈: 鼎の足が折れ、王侯のご馳走をひっくり返し、汁が体中にべったりとつく、凶険である。徳がその位に見合わず、能力がその職務に耐えないと、必ず事を敗ることになる。

  • 六五: 鼎、黄耳(こうじ)に金鉉(きんげん)有り、貞(ただ)しくすることに利あり。

鼎黄耳金铉、利贞。 解釈: 鼎に黄色い耳と金属製の持ち手(吊り上げるための横木)がある。正しい道を守ること(正道を保つこと)に利がある。尊い位置にあって柔順であり、賢才の補佐を得て、道具も精良である。

  • 上九: 鼎、玉鉉(ぎょくげん)にす、大吉にして、利(よろ)しからざる無し。

鼎玉铉、大吉、无不利。 解釈: 鼎に玉製の吊り手があり、大吉で、何事もうまくいかないことはない。剛(強さ)と柔(しなやかさ)が互いに助け合い、徳と地位を兼ね備え、新しいもの(事業など)が大きく成る。

核心の象意

鼎卦は、上卦が離で火、明るさを表し、下卦が巽で木、順入を表します。木が火を生み出して(燃やして)食物を煮炊きし、鼎は国家を立てる重要な器であり、国を安定させ安寧を築くこと、旧いものを改め新しいものを打ち立てること、賢人を任用して民を養うこと、位序を端正(たんせい)にすることを象徴します。人事に当てはめると、新しい制度を立てること、賢人を任用して能力を発揮させること、事業が安定すること、正道を守り使命に集中すること、などに対応します。主として新たに事業を起こすこと、正しい位置に立って成果を守ること、物を成し賢人を養うことを主導します。能力が職務に耐えず、足を折ってご馳走を覆すような事態は、凶を招くと警告しています。

鼎卦の六つの爻は、鼎の使用を巡って展開されます。初爻は鼎の足をひっくり返し穢物を清める。二爻は鼎の中に実(実質)があり、正道を守って吉を得る。三爻は鼎の耳が変化し、悔恨が和らいで最終的に吉。四爻は鼎の足が折れ、公の食物を覆して凶。五爻は黄金の持ち手に黄色い耳があり、正道を守りその用を全うする。六爻は玉の持ち手が華美で、大吉でうまくいかないことはない。全体的な核心は、 木火が煮炊きし、旧弊を改め新しいものを打ち立て、位を正し使命に凝注する ことです。

万物類象

  • 卦性: 雑卦、上明下入、木の上に火あり、鼎器が安定
  • 五行: 火・木(離は火に属し、巽は木に属する)
  • 方位: 南方と東南方
  • 時季: 春夏、木と火が相生(そうしょう)し、新たなものを成す時
  • 人物: 政治を行う君子、賢人を任用する明君、賢人を養う士
  • 身体: 心臓・肝胆・耳目。神気が清らかで位序が安定していることを主る
  • 動物: 雉
  • 器物: 鼎器(かなえ)、金の持ち手、玉の持ち手、煮炊きの道具
  • 場所: 宗廟、朝廷、厨房
  • 人事: 国を定めて安らかにし、旧弊を改め新しいものを打ち立て、賢人を用いて民を養い、位を正しくして命に凝注する
  • 色彩: 赤色、黄色、青(緑)色、玉の色
  • 五味: 苦味、酸味
  • 数: 三、四、九

古籍原文

卦辞爻辞

火風鼎: 鼎:元吉、亨。
初六: 鼎顛趾、利出否。得妾以其子、無咎。
九二: 鼎有実、我仇有疾、不我能即、吉。
九三: 鼎耳革、其行塞、雉膏不食。方雨虧悔、終吉。
九四: 鼎折足、覆公餗、其形渥、凶。
六五: 鼎黄耳金銭、利貞。
上九: 鼎玉鉉、大吉、无不利。

彖伝(たんでん)

《彖》曰:鼎、象なり。木をもって火を巽(したが)えしめて、亨饪(こうじん)なり。聖人亨じて以って上帝を享(すす)め、而(しか)も大亨(たいこう)して以って聖賢を養う。巽にして耳目聡明なり、柔進みて上行す、中を得て剛に応ずるあり、是(これ)をもって元亨なり。

解釈: 鼎卦は、物の形象です。木が火に従って食物を煮炊きすることです。聖人は煮炊きして天神を祭り、また盛大に煮炊きして聖賢を養います。謙譲でありながら耳と目が明晰で聡明、柔順で進み上がり、中正を得て剛健(陽剛)に応ずる。それ故に大いに通じる(大亨通)のです。

象伝(しょうでん)

《象》曰:木の上に火あり、鼎なり。君子以って位を正しくして命を凝らす。

解釈: 木の上に火があり、煮炊きして鼎となる。これが鼎卦の象です。君子はこの象に法り、自身の位置を正しく定め、使命に集中します。

《象》曰:

  • 鼎顛趾、未だ悖(もと)らざるなり。利出否、貴に従わんと以てするなり。
  • 鼎有実、慎みて行く所を定めるなり。我仇有疾、終に尤(とが)無からん。
  • 鼎耳革、その義を失うなり。
  • 鼎折足、公餗を覆す、信(まこと)や如何(いか)ならん。
  • 鼎黄耳、中をもって実と為すなり。
  • 玉鉉上に在り、剛柔節(せつ)ありなり。

解釈:
鼎の足がひっくり返るのは、道理に背いていない。穢物を除き去るのは、尊貴なもの(清浄・正道など)に従おうとするため。
鼎の中に実があるのは、慎重にその向かう先を選ぶため。ライバルに障害があれば、最終的に咎められることはない。
鼎の耳が変形するのは、その本来の役目(意味)を失う。
足を折りご馳走をひっくり返すのは、信頼できませんね(堪えられない)。
黄色い耳は中にあって、中実(ちゅうじつ・内実が充実)を実現させる。
玉の持ち手が上にあるのは、剛強と柔順の調和が整っている。

よくある質問

鼎卦は基本的に吉ですか凶ですか?

答: 鼎卦は上吉の卦です。その徳が地位と釣り合い、正位(せいい)に立ち使命に凝注し、賢人を任用して新しいものを打ち立てるなら吉です。しかし、徳がその位に見合わず、足を折りご馳走を覆すような事態は凶です。

鼎卦の「正位凝命」とはどういう意味ですか?

答: 自らの身の程(位置)を正しく定め、使命という集中するべき対象(命)に全てを注ぎ込むことです。君子が新たに事業を起こし成す根本となる原則です。

鼎卦はどのような場面で参考になりますか?

答: 新しい制度を立てたり、賢者を用いて能力を発揮させたり、国家の基礎を固めたり、事業の基盤を安定させるなど、「新たなものを成す」場面に向いています。徳が伴わないのに無理に動くこと、軽率で落ち着きのない行動には不向きです。

事業や出世について占いで鼎卦が出た場合、どのような示唆がありますか?

答: 正位に立ち使命に集中し、賢人を任用して民を養うことが良いでしょう。六五爻と上九爻は、持ち物(道具や周囲の補佐)が精良なため、最も吉とされます。九四爻は、能力がその位に伴わずに失敗を招くことを戒めています。

鼎卦と革卦はどのような関係がありますか?

答: 革卦は、旧い状態や制度を革める(あらためる・取り除く)ことを主とします。一方、鼎卦は、新しいもの(制度や国家)を成り立たせることを主とします。二者は綜卦(そうか・裏返しの関係)でもあり、「革(改革)して後に鼎(建設)」というように、先に革めて旧弊を除き、その後新しいものを打ち立てる、「革故鼎新」の関係にあります。