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第28卦 沢風大過

沢風大過(たくふうたいか)は『易経』六十四卦の第28番目の卦であり、上が兌(だ)の沢、下が巽(そん)の風からなり、雑卦に分類されます。大いに行き過ぎた状態、陽剛の気が過剰、家の棟(むなぎ)がたわむ現象の象徴であり、沢水が樹木を覆い、沢が木の下を流れ、陰陽の調和が失われた様子を表します。核心的な意味は 「沢(たく)木(もく)を滅(めっ)す、大過(たいか)、君子(くんし)以(もっ)て独立(どくりつ)して懼(おそ)れず、遁世(とんせい)して悶(もん)せず」 で、尋常でない時機と行為、矯正が度を過ぎる「矯枉過正」(きょうおうかせい)、危機を救うということを主(しゅ)とします。吉凶の度合いとしては「中平」(ちゅうへい)の卦に分類され、陽の気が過剰になる状況で、剛健な力で柔弱を補い、異常な時代に異常な道理を行う法則を明らかにしています。

卦象と卦辞

卦象

沢風大過
第28卦 · 上兌下巽 · 沢滅木
上卦:兌 ☱下卦:巽 ☴五行:金木(兌は金に属し、巽は木に属す)
沢風大過が示す道理を象徴する。

卦辞

大過:棟桡(とうどう)。利(り)にして往(ゆ)く攸(ところ)有り、亨(とおる)。

釈義: 大過の卦は、大いに行き過ぎた状態を象徴し、家の棟が曲がって危険な様子を表します。往くところあらば利益があり、亨通(こうつう)を得ます。局勢が極限までアンバランスになったことを暗示し、危険な兆しがあるものの、矯正する道を歩み、流れに沿って行動すれば、なお亨通できることを寓意しています。

爻辞

  • 初六(しょろく): 藉(しゃ)るに白茅(はくぼう)を用(もち)ゆ、咎(とが)なし。

藉(しゃ)るに白茅(はくぼう)を用(もち)ゆ、咎(とが)なし。 釈義: 祭品を清らかな白茅(はくぼう)の草で敷くこと。始めを慎み終わりを敬うことで、災いはありません。過剰な状態の初めに位置し、柔和で慎重な態度で事を進め、兆候のうちに問題を防ぎ、柔和をもって剛健の過剰を補うことを象徴します。

  • 九二(きゅうじ): 枯楊(こよう)稊(てい)を生ず、老(ろう)夫(ふ)其(そ)の女妻(じょさい)を得る、不利(ふり)無し。

枯楊(こよう)稊(てい)を生ず、老(ろう)夫(ふ)其(そ)の女妻(じょさい)を得る、不利(ふり)無し。 釈義: 枯れた楊の木が新しい芽(め)を出すこと。年老いた男性が若い女性を妻とすること。何も不利なことはありません。陰陽が互いに補い合い、剛柔が一体となること、柔和で剛健を補うことを寓意し、衰退の中から再び生命力を獲得することを示します。

  • 九三(きゅうさん): 棟桡(とうどう)、凶(きょう)。

棟桡(とうどう)、凶(きょう)。 釈義: 家の棟が曲がる。凶禍(きょうか)あり。剛健すぎて中庸を得ず、重さに耐え切れず、情勢が崩壊し、必ずや凶禍を招くことを象徴します。

  • 九四(きゅうし): 棟隆(とうりゅう)、吉(きち)。它(た)有れば、吝(りん)。

棟隆(とうりゅう)、吉(きち)。它(た)有れば、吝(りん)。 釈義: 家の棟が高く盛り上がる。吉(めでたい)。もしも他に心変わりなどがあれば、悔しいことがある。剛健でありながら中(まんなか)を得て、危険な局面を支え、行き過ぎた弊害(へいがい)を矯正し、吉祥を得ることを寓意します。もし心に他の想念(そうねん)があれば、後悔を生む害となります。

  • 九五(きゅうご): 枯楊(こよう)華(はな)を生ず、老(ろう)婦(ふ)其(そ)の士夫(しふ)を得る、咎(とが)無く誉(ほまれ)無し。

枯楊(こよう)華(はな)を生ず、老(ろう)婦(ふ)其(そ)の士夫(しふ)を得る、咎(とが)無く誉(ほまれ)無し。 釈義: 枯れた楊の木に花が咲くこと。老いた女性が若い男性を夫とすること。過ちもなく、称賛すべき誉れもありません。過度に極まった時に無理に栄誉(えいよ)を求めようとすることを寓意し、災いこそないが、特に称えるべきところもない状態を示しています。

  • 上六(じょうろく): 過(す)ぎて渉(わた)りて頂(いただき)を滅(めつ)す、凶(きょう)、咎(とが)なし。

過(す)ぎて渉(わた)りて頂(いただき)を滅(めつ)す、凶(きょう)、咎(とが)なし。 釈義: 川を渡ろうとして水が頭の頂上を覆って溺れること。凶禍あり。しかし道義上の罪や咎はありません。過剰極まりの最後に位置し、危機を救い助けるために身をもって危険に赴(おもむ)くことを寓意し、死んでも咎めを受けることはなく、身を捨てて道を成す精神を示します。

核心的な象徴的意味

沢風大過の卦は、上卦の兌(だ)が沢や柔和を表し、下卦の巽(そん)が木や順従を表します。沢の水が過ぎて木を濡らし(あるいは覆い)、家の棟が曲がることは、陽剛の気が過剰で、陰陽の調和が崩れ、情勢が危殆(きたい)に瀕していることを象徴します。常道を超えた手段で弊害(へいがい)を矯正し、危機を救う必要があることを示唆しています。人の世の事象では、危機に瀕した時機、重任を担うこと、矯枉過正(矯正が行き過ぎる)、型破りな行動などの状況に対応します。自立して懼れず、剛健さで弱小を救い、変事に驚かないことを主(しゅ)とします。同時に、剛が過ぎれば折れやすいと警告し、剛と柔をうまく調和させる必要があることを示しています。

沢風大過の六つの爻は、「行き過ぎた状況での処し方」を巡って展開されます。初六は始めを慎み終わりを敬い、柔和で過ちを補い、九二は枯木に芽吹きを見て、陰陽相まって吉を得、九三は棟が曲がり中が弱く、剛健過ぎて凶を招き、九四は棟が盛り上がり、剛健でありながら中庸を得て吉を得、九五は枯木が花咲き、過剰極まっても咎はなく誉れもなく、上六は危険を冒して溺れ、道のために犠牲となっても咎なし、と展開します。全体の核心は 「陽剛の気が過剰な状況下での弊害の矯正と、自立して懼れないこと」 にあります。

万物類象

  • 卦の性質: 雑卦、沢が木を滅ぼす、陰陽不均衡、棟のたわみ
  • 五行: 金と木(兌は金、巽は木)
  • 方位: 西方と東南方
  • 時期: 盛夏、沢水が氾濫して木々が水没する時期
  • 人物: 重任を担う人、矯正を行う者、型破りの行動をする人、隠者
  • 身体: 肺、肝胆、脊椎、主として脊椎の湾曲や陰陽の不均衡
  • 動物: 羊、雞、水中の禽類(水鳥など)
  • 器物: 家の棟、橋、白茅、船
  • 場所: 沼沢地、深い沢、傾いた家、危険な地
  • 人事: 矯枉過正、危機の救済・救難、型破りな人物登用、変事に対する責任ある行動
  • 色彩: 白、青、金
  • 五味: 辛(からい)と酸(すっぱい)
  • 数: 四、五、七

古籍原文

卦辞爻辞

大過: 棟桡(とうどう)。利(り)にして往(ゆ)く攸(ところ)有り、亨(とおる)。 初六: 藉(しゃ)るに白茅(はくぼう)を用(もち)ゆ、咎(とが)なし。 九二: 枯楊(こよう)稊(てい)を生ず、老(ろう)夫(ふ)其(そ)の女妻(じょさい)を得る、不利(ふり)無し。 九三: 棟桡(とうどう)、凶(きょう)。 九四: 棟隆(とうりゅう)、吉(きち)。它(た)有れば、吝(りん)。 九五: 枯楊(こよう)華(はな)を生ず、老(ろう)婦(ふ)其(そ)の士夫(しふ)を得る、咎(とが)無く誉(ほまれ)無し。 上六: 過(す)ぎて渉(わた)りて頂(いただき)を滅(めつ)す、凶(きょう)、咎(とが)なし。

彖伝

《彖(たん)》に曰(いわ)く、大過(たいか)は、大なる者(もの)の過(す)ぎたるなり。棟桡(とうどう)は、本末(ほんまつ)弱(よわ)きなり。剛(ごう)過(す)ぎて中(ちゅう)にあり、巽(そん)にして説(えつ)して行(おこな)う、利(り)にして往(ゆ)く攸(ところ)有り、乃(すなわ)ち亨(とお)る。大過(たいか)の時(とき)大(おお)いなるかな。

釈義: 大過とは、陽の剛健なものが過剰であることです。家の棟が曲がるのは、根本と末梢が共に弱いからです。陽剛の気が過度であるにもかかわらず中正な位置を得て、謙遜して順調に行動することから、行くところあらば利益があり、ゆえに亨通するのです。大過という卦の時勢に関する意義はとても大きく重要なものです。

象伝

《象(しょう)》に曰(いわ)く、沢(たく)木(もく)を滅(めっ)す、大過(たいか)なり。君子(くんし)以(もっ)て独立(どくりつ)して懼(おそ)れず、遁世(とんせい)して悶(もん)せず。

釈義: 沢水が樹木を水没させる、これが沢風大過の卦の象(かたち)です。君子(徳のある立派な人)はこの象にならって、世の中にあっても独り立って懼れず、世を避けて隠遁しても煩悶(はんもん、もだえ苦しむ)しないのです。

《象(しょう)》に曰(いわ)く:

  • 藉(しゃ)るに白茅(はくぼう)を用(もち)ゆるは、柔(じゅう)下(もと)に在(あ)るなり。
  • 老夫(ろうふ)女妻(じょさい)なるは、過(す)ぎて以(もっ)て相(あい)与(あずか)るなり。
  • 棟桡(とうどう)の凶(きょう)なるは、以(もっ)て輔(たす)く有(あ)るべからざるなり。
  • 棟隆(とうりゅう)の吉(きち)なるは、下(もと)に桡(たわ)まざるなり。
  • 枯楊(こよう)華(はな)を生ずるは、何ぞ久(ひさ)しくせん。老婦(ろうふ)士夫(しふ)なるも、亦(また)丑(しゅう)なりとすべし。
  • 過(す)ぎて渉(わた)るの凶(きょう)なるは、以(もっ)て咎(とが)するべからざるなり。

釈義: 白茅を敷くことは、柔和で下の位置に居て慎み深く行動することを表します。 老いた男に若い妻があることは、過剰な時期において陰陽が相交わり互いに助け合うことを表します。 棟が曲がって凶を招くのは、それを支え補助することができないからです。 棟が高く盛り上がって吉祥であるのは、下向きに曲がらないからです。 枯れた楊の木に花が咲くのは、永続きはしません。老いた女に若い夫があることも、恥じるところがあります。 危険な渉りを越えて溺れるという凶は、身を捨てて道理を実践することであり、罪を咎めることはできないのです。

よくある質問

沢風大過は主に吉か凶か?

答: 沢風大過は「中平」(ちゅうへい)の卦に分類されます。剛と柔が互いに補い合い、弊害を矯正できれば吉ですが、剛が過ぎて補助がなく、根本と末梢の力がアンバランスであれば凶です。尋常ではない時機に尋常ではない道理を行うべき場合です。

沢風大過の「棟桡」(とうどう)とはどういう意味ですか?

答: 家を支える棟梁(とうりょう)の木材が曲がることを指します。情勢が危うく、根本と末梢がともに弱く、陽剛の気が過剰で重さに耐えられなくなったことを象徴し、この卦が示す核心的な危機の現象です。

沢風大過はどのような場面に適していますか?

答: 危機を救い助ける、矯枉過正(きょうおうかせい)で直す、型破りの行動をとる、重大な責任を担う、などの尋常でない場面に適しています。決まりきった型を踏襲すること、剛健すぎてむやみに動くこと、柔弱で頼りない状態には向きません。

事業の危機について占って沢風大過が出た場合、何を示唆していますか?

答: 事業が危機的でバランスを失った状態にあることを示唆します。剛と柔を調和させ、独立心を持って責任を引き受けることが良いでしょう。九四爻の「棟隆」のように危険を高めて支えるのが最も吉であり、初六爻のように慎み深く行動し、上六爻のように身をもって危難に赴くことも可能ですが、九三爻のように剛が過ぎて凶に至ることを最も戒めなければなりません。

沢風大過と頤(い、養う)の卦にはどんな違いがありますか?

答: 頤(い)の卦は正しく養う、生気を養う、動と静の節度、生命力を育むことが主です。それに対して、沢風大過の卦は、陽剛の気が過剰、危機を救い弊害を直す、尋常ではない行動を行うことが主です。この二つの卦は互いに綜卦(そうか、上下を逆にして見た関係)の関係にあり、一つは「養い」、一つは「過ぎ」で、互いに相反しながら互いを補完する関係です。